カレーのライスを炊き忘れ

まいにちたのしくにっき!

またどこかで

犬派か猫派か?という質問はナンセンスだと思う。犬も猫もかなり可愛いので、どちらも好きでいいと思う。世の中は二元論で溢れすぎている。とはいえ犬と猫を同じ空間で飼うのは色々と大変である。それに15年前の私はちょうど犬にどハマりしていて、特にスヌーピーの漫画が大好きだった。そんな時に君は我が家にやってきた。

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知り合いのブリーダーさんからビーグルの子供が産まれたという知らせを受けて、すぐに見に行った。てっきりスヌーピーみたいな、白黒の二足歩行の犬がいるんだとばかり思っていた私は、茶色と黒と白の子犬たちを見て拍子抜けした。でもそれはそれで可愛らしかった。好きな子を選びなさいと言われて、1時間くらい悩んだのを今でも覚えている。結局なんとなく、1匹だけ隅っこでグーグー眠っているメスを選んだ。名前は当時好きだったポケモンの「ウィンディ」にしたかったが、妹に却下された。その妹が当時好きだった「おしゃれ魔女ラブ&ベリー」の「ラブ」か「ベリー」の2択で家族会議となり、名付け親戦争に負けた私は「ラブ」じゃあまりにも甘すぎるから、せめて「ベリー」にしてくれと懇願した。

ベリーは本当にやんちゃで、なんでも食べる犬だった。小学校の友人がうちに遊びにきた時なんか、彼のPSPというゲーム機のメモリーカードをズタズタに噛み砕いたりしていた。どうやって引っ張り出したのか見当もつかない。彼は優しくて、許してくれたけど、彼が帰った後にバカ犬と喧嘩した。

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ご飯を食べる量も半端じゃなかった。ある日、私が学校から帰ると余りにもお腹がパンパンになっている彼女を見て、妊娠しているのかと勘違いするほどだった。そのあと物置のドアが開いていて、ドッグフードの入った袋を破って、1kgくらい食べていたことが発覚した。人間の私より食べるのかよ、とドン引きした。いつも一緒に寝ていたが、上に乗られると重くて暑くて、足でどけたりすると、夜中に噛みつかれてよく起こされていた。それでも何故か同じ布団で寝ようとするバカ犬だった。

私が地元から遠い中学/高校に入学してから、彼女と過ごす時間がどうしても減ってしまった。仕方がないことだし、当時は正直あまり寂しいとも思わなかった。

ある週末に久しぶりに公園に一緒に散歩に出かけた。子犬の頃によく遊んでいたグラウンドでボール遊びでもするかと、ボールを思いっきり投げたが、彼女は見向きもしなかった。本当にバカ犬である。なぜ飼い主がセルフで玉拾いしなくちゃいけないんだ。今思い返すと、その時もう8~9歳になっていた彼女は人間で換算すると50代後半くらいだったので、もうボール遊びを嗜むような年齢ではなかったっぽい。すまん。

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大学に入るとますます彼女と会う機会は減った。私は実家に頻繁に帰るタイプの学生ではなく、お盆や年末年始もバイトをして過ごしていた。年に1回帰るか帰らないかくらい。たまに会う彼女は、いつも最初の数分間完全に私のことを忘れているんじゃないかというくらいよそよそしかった。これだからバカ犬は困る。実は相当ショックだったし、「家を出る」ということを目に見えて実感したのはこれが初めてだったから、ちょっと堪えるものがあった。

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最後に彼女に会ったのは今年の3月だった。随分毛の色が薄くなり、左目が白内障になってしまって濁っていた。認知症も少し出ているみたいで、ベッドで眠っている時間が以前よりも長くなっていた。それでも、これまで一度も大きな病気をしたことのない彼女である。ご飯だって食べなかった日がない。食い意地だけは子犬の頃のままである。だから、心のどこかでまだまだ元気でいてくれるだろうと思っていた。

それが今朝、眠るように亡くなった、と実家から連絡があった。数日前から具合が悪いという話は聞いていた。獣医さんにも頬にある腫瘍が骨髄に転移していて血を作る機能がやられてるのでもう長くはないです、明日かその次の日か....と言われていたらしい。それならそれでもっと具合悪そうにしろよ。その前日までめっちゃ飯食って散歩も行ってたらしい。つくづくバカ犬である。あまりにも急な余命宣告に、家族も私もよく意味がわからなかったし、また明日からもたくさん飯を食って「さんぽ!」とはしゃいでくれるんじゃないかと何故か信じていた。しかしそうもいかず、すんなりと息を引き取った。何も苦しそうにせず、眠ったまま気付いたら息をしていなくて、そのまま目を覚まさなかったらしい。15歳と半年も生きてくれた。

実家に帰る選択肢もあったが、両親も若くないし祖母もいるので、コロナ的なアレで今回は帰らないことにした。私がスヌーピーに憧れて、私がたくさんの子犬から彼女を抱き上げたのに、最期を看取ってやれなかった。次に実家に帰った時にはもう彼女がいないということが想像もできない。ペットはあくまでもペットだと思っているし、こうなることも分かってはいたのに、何かぽっかりと穴が開いてしまったような感覚だけが残ってしまっている。

たくさん散歩して、たくさん美味いもん盗み食いして、たくさんみんなに愛されて、幸せだったかな。あっちではちゃんとダイエットしろよ。またね、バカ犬。

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